マーケティングの世界では、「顧客のニーズを考えて」などと言われることがよくあります。これは、商品の開発や販売の際に、顧客の”欲しい”と思う気持ちに働きかけて購入を促すために、顧客の欲求を理解しましょう。ということなのですが、人が”欲しい”と思う気持ちには、「ニーズ」と「ウォンツ」という2つの言葉があります。しかし、この2つはよく使用される言葉でありながら、その解釈については人それぞれだったりと、かなり曖昧なものでもあります。
needs:必要性と、wants:欲望・欲求
多様な定義があるのですが、ここでは「ニーズ=生活の中で不足したものを求める漠然とした衝動・隠れた(潜在的な)欲求」「ウォンツ=具体的(顕在的)なモノ・ニーズを満たすモノ」という意味で話しを進めます。
「何か食べたい」とか「眠りたい」という漠然な願望がマーケティングでいうニーズです。
ニーズ(needs)は人間生活上必要なある充足感が奪われている状態のこと。これを満たす(特定の)モノはウォンツ (wants) と呼ばれる。
ウォンツ(欲求)とは、人間が日常生活を営む上で感じる「満ち足りない状態」(=ニーズ)を満たすために求める感情。ニーズが具体的に表現された製品やサービスを求める感情。
ニーズとウォンツ 例1:「お腹がすいた」
「お腹がすいた」という欲求は、食欲が満たされていない時の衝動であり漠然とした欲求=ニーズです。その上で「○○が食べたい」というウォンツが生まれます。
例えば、「お腹が空いた」という漠然とした【ニーズ】に対して、「ラーメンが食べたい」とか「チャーハンが食べたい」という具体的な欲求が【ウォンツ】となります。
ニーズとウォンツ 例2 「喉が渇いた」
「喉が渇いた」という欲求も、喉の渇きが満たされていない時の衝動であり漠然とした欲求=ニーズです。その上で「○○が飲みたい」というウォンツが生まれます。
「何でもいいから冷たい飲み物が飲みたい」
これは「喉の渇きを満たしたい」衝動なので”ニーズ”になります。
「スポーツドリンクが飲みたい」
これは「喉の渇きを満たしたい」ニーズの次(もしくは上)にある、具体的な欲求なので、”ウォンツ”になります。
”ニーズを考える”とは
とあるホームセンターにドリルを探しにきたAさん。なかなかドリルをみつけることができなかったAさんは、店員さんに「ドリルはありますか?」と尋ねました。しかし、ドリルは在庫切れだったため、その店員は「売り切れです」と答えました。Aさんは何も買わずにお店をあとにしました。
このお話、実は”ドリルが欲しい”の裏には「穴をあけたい」という潜在的な欲求=ニーズがあったので、「穴をあけられるモノ」なら他の工具でもよかったのです。
ドリルコレクターでもない限り、べつにドリルが欲しいのではなくて、ドリルを使う”必要がある”から買っているわけです。顧客が何を求めているのかを汲み取ることで、アプローチの方法も変わってきます。
こうしたニーズに気づかずに、ただ単に目的の物だけを宣伝していると、あまり効果は期待できません。
”ニーズを考える”
メリットは何か?ウォンツが生まれた人は具体的な満足度を求めます。そのニーズは多様で、「オシャレな棚が欲しい」人は、「整理したい」ニーズではなく、「カッコイイ自分の部屋を持ちたい」(ウォンツ)→「モテたい」(ニーズ)からきているのかもしれません。また、オシャレなスーツが欲しい人は、「モテたい」ではなくて、「仕事で人と会う時の印象をよくしたい」から欲しいのかもしれません。
企業の目標の1つはマーケティング戦略を駆使して、顧客ニーズを発見し、そのニーズをウォンツまで高めていくことです。
どの段階の「欲しい」を捉えるかが重要
冒頭でも書いたように「ニーズとウォンツは定義が曖昧」ですが、どれが正しいとか正しくないとかではなく、相手との会話の中でどういう解釈で何を求めているのかを汲み取ることが大切で、そして、”欲しい”には段階や経緯があって、どの”欲しい”にフォーカスをあてて行動するのか、が大事なのではないかと思います。
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